離婚時の子どもの連れ去りは違法? 適法・違法の判断基準を解説
離婚や別居を考えるとき、子どもを連れて家を出たら犯罪になるのではないかと不安を感じる方は多くいらっしゃいます。
ただ、連れ去りが違法になるかどうかは一律に決まるものではなく、その方法や状況によって判断が分かれます。
この記事では、子どもの連れ去りが違法になるケースとならないケースについて、法律の規定や裁判例を踏まえて整理します。
子どもの連れ去りに関わる2つの法律
子どもの連れ去りが問題になる場面では、刑法と民法の2つの法律が関係してきます。
それぞれの内容を確認しておきましょう。
刑法224条 ── 未成年者略取・誘拐罪
刑法224条は、未成年者を略取または誘拐した者に3月以上7年以下の懲役を科すと規定しています。
略取とは暴行や脅迫によって連れ去ること、誘拐とはだましたり誘い出したりして連れ去ることです。
注意すべき点は、実の親であっても適用される可能性があることです。
親権者だからといって、違法性が当然に否定されるわけではありません。
最高裁平成17年12月6日決定が参考になります。
この事案では、別居中の父親が保育園帰りの2歳の子どもを祖母から奪い、車に乗せて連れ去りました。
裁判所は、共同親権者であっても未成年者略取罪は成立し得ると判断しています。
理由として挙げられたのは、次の3点です。
- 子どもが母親のもとで問題なく養育されていたこと
- 連れ去りの方法が粗暴で強引だったこと
- 父親側に連れ去りの必要性がなかったこと
民法820条 ── 監護権の考え方
民法820条は、親権者が子の利益のために監護と教育をする権利・義務を持つと定めています。
つまり、親権はあくまで子どもの福祉を実現するための権限です。
婚姻中は父母が共同で親権を行使します。
しかし、別居によって一方の親が事実上の監護者となっている場合は注意が必要です。
もう一方の親が無断で子どもを連れ去ると、監護権の侵害と評価されることがあります。
違法と判断されやすいケース
次のような事情がある場合、連れ去りが違法と判断されるリスクは高まります。
- 暴行や脅迫を用いて子どもを無理やり連れ去った
- 家庭裁判所の審判や調停で監護者が決まっているのに、それに反して連れ去った
- 保育園や学校からの帰り道で待ち伏せして連れ去った
- 面会交流の際に子どもを返さなかった
- 転居先を隠して相手親と子どもの交流を完全に遮断した
暴行や待ち伏せなど態様が悪質な場合は、刑事上の責任を問われるおそれがあります。
また、面会交流後の不返還や転居先の秘匿は、直ちに刑事事件にはなりにくいものです。
しかし、家庭裁判所での監護者指定や親権判断では不利に働きます。
いずれにしても、連れ去りの経緯は後の手続で重要な考慮要素になります。
違法と判断されにくいケース
一方で、以下のような事情がある場合は、子どもを連れて別居しても違法と評価されにくくなります。
DVやモラハラからの避難
配偶者から身体的・精神的な暴力を受けている場合があります。
そのような状況で自分と子どもの安全を守るために家を出ることは、正当な行為と判断されやすくなります。
DV防止法に基づく保護命令の申立てや、支援センターへの相談記録があると裏づけになります。
暴力を受けている状況であれば、まずは身の安全を確保することが最優先です。
子どもへの虐待がある場合
相手方が子どもに身体的虐待やネグレクトを行っている場合も同様です。
子どもの安全を確保するための行動として、正当性が認められやすくなります。
この場合も、児童相談所への通告記録や医療機関の診断書など、客観的な証拠を残しておくことが大切です。
主たる監護者による別居
これまで主として子どもの養育を担ってきた親が、子どもを連れて別居することは、直ちに違法と評価されないケースが多いです。
家庭裁判所は子どもの生活環境の継続性を重視します。
日常的に食事や入浴、通園の世話をしていた親がそのまま子どもと暮らし続けることは、子の利益にかなうと考えられるためです。
ただし、連れ去りの方法が強引な場合は別です。
相手親との交流を完全に遮断した場合も、主たる監護者であっても問題視されることがあります。
連れ去られた側がとるべき対応
子どもを連れ去られてしまった場合は、自力で取り戻すことは避けてください。
無断で連れ戻す行為自体がさらなる違法と判断されるおそれがあります。
取るべき手順は、家庭裁判所への子の引渡し調停または子の引渡し審判の申立てです。
特に急を要する場合には審判前の保全処分という手続もあります。
いずれも裁判所の判断のもとで進めることが、結果的に自身の立場を守ることにつながります。
まとめ
子どもの連れ去りが違法かどうかは、その方法、目的、それまでの監護の状況など、個別の事情によって結論が変わります。
DVや虐待からの避難であれば正当と認められやすい傾向です。
一方、暴力的な方法や裁判所の決定に反する行為は、刑事責任を問われる可能性もあります。
ご自身の状況がどちらに該当するかは、事実関係を丁寧に確認しなければ判断できません。
お子さまの将来にも関わる重要な問題です。
早い段階で離婚問題に詳しい弁護士に相談し、適切な方法で進めていくことが大切です。
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野口 眞寿Masatoshi Noguchi / 第一東京弁護士会
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- 所属団体・資格等
-
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
- 略歴
-
2008年 東洋大学法学部 卒業 2011年 東洋大学法科大学院 卒業 2011年 司法試験合格 2012年 弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
2013年 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要
Office Overview
| 名称 | 初雁総合法律事務所 |
|---|---|
| 資格者氏名 | 野口 眞寿(のぐち まさとし) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
| 連絡先 | TEL: 050-3184-3790 |
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